−曲目解説−
T 女声合唱のための小品宗教曲集 「マリアヘの讃歌」
このステージでは、3人の作曲家によるアカペラ(無伴奏)の宗教曲を女声合唱で演奏します。すべて、聖母マリアを歌った4曲を選びました。時代を越えて歌い継がれている教会音楽の美しさや、その裏側に隠されている人々の信仰の心を表現したいものです。
第1曲と第2曲は、「コールユーブンゲン」の著者として名高い、フランツ・ヴュルナー(1832〜1902)の作品です。音楽教育に貢献した人の作品らしく、基礎的な和音で無駄のない美しいハーモニーを創り上げています。
第3曲は、ゲオルグ・トレクスラーの作品です。作者の生年などは不詳ですが、ルネサンス期の作品であろうと考えられます。和音の展開の美しい作品です。
第4曲は、グレゴール・アイヒンガー(1564〜1628)の作品です。彼は、パレストリーナ形式の代表者の一人で、数字附低音を初めてドイツに移入した人です。この曲は、ポリフォニー(各パートが独立したメロディーを演奏する形式)で、ルネサンスの教会音楽の特徴がよく表れている作品です。
U 男声合唱組曲 「柳河風俗詩」
この組曲は、昭和28年、作曲者多田武彦が、合唱コンクール課題曲に応募して佳作になった第1曲を含めて、約1ヵ月をかけて完成させた、最初の本格的な組曲であり、また、彼の代表作でもあります。当時、彼は京都大学を卒業し、銀行に勤務するようになりましたが、学生時代にやった男声合唱が忘れられず、作曲を続けていました。また、作曲家である清水脩が、月1回大阪を訪れていた際に、作曲についての助言をもらっていました。「親しみやすい日本の歌を男声合唱で」という清水脩の言葉が、この組曲や、その後の数多くの男声合唱曲の誕生の引き金になりました。
柳河(現在は柳川と書く)は、北原白秋の郷里で、明治20年代の柳河の姿や、幼い白秋の心が、抒情小曲集『思い出』に記されています。作曲された4通の詩は、その中の「柳河風俗詩」から選ばれたものです。町の至るところに掘割のある水郷柳河の日本的な情緒と、白秋の幼い目に映った当時の柳河の風俗を精一杯表現することで、忘れていた日本の良さを歌い上げたいと思っております。