今池混声合唱団 第12回定期演奏会

〜曲目解説〜

混声合唱とピアノのための「四つの小品」

 混声合唱とピアノのための“四つの小品”は、萩原英彦が、周郷博と矢澤宰の詩に曲をつけた合唱曲です。1つめの“冬枯れ”2つめの“枯れ草の春は”3つめの“小さな川”は、周郷博の詩です。冬の陽ざしの中、緑の草をついばんでいる一羽の山鳩。夜をとおしてつきない星たちの物語。何か忘れていた物を思い出させてくれる枯れ草の春。残雪がとけ、ひばりが歌う春近い3月の正午。そして誰にも知られないように静かにたゆみなく流れている小さな川。といろいろな情景がうたわれています。

 4つめの“秋風”は矢澤宰の詩です。三日月の先を白い指がつかんでいる。それは人の指でもなく、天の指でもない。ひとりあそびの大好きな秋風の指、とうたっています。前の3つとは異なり幻想的です。ピアノと共にこの四つの小品、メインディッシュの前のオードブルのような感じでお楽しみいただけたらと、思っております。

Anniversary 〜 ユーミン's メドレー〜

 はじめてユーミンの曲を聴いたとき大いなる安らぎを感じた。どんな安らぎであるかを考えてみたとき「母」の事が頭の中に浮かんできた。誰にでも母親はいる。これは否定することのできない絶対的なものである。この事実があるからこそ私は笑い、怒り、人を愛し、時には憎しみ、自分の存在を感じている。

 誰でも子どもの頃はどんな事でも出来ると信じていただろう。理想、夢しかなかったと思う。

 しかし、大人になるにつれて社会の現実、醜い部分を見、自分一人ではどうすることもできない事があることを知った時、あの幼いころに戻り母の温もりに甘える事ができたらどんなにか幸せだろうかと思うことがあるはずである。そんな思いを満たし、 自分がいつのまにか懐かしさに浸ってしまう。そんな魔術が「ユーミン」の曲にはある。この魔術を演奏会に来たあなたに伝えることができたら・・・・

混声合唱組曲「方舟」

 この作品は、1980年に東京外国語大学混声合唱団コール・ソレイユの委嘱により作曲された、木下牧子の代表作です。

 大岡信は、これらの詩を10代後半で書き上げていますが、思春期のやり場のないむなしさや挫折感を、水や宇宙のイメージに織り込み、スケールの大きな表現でまとめています。

 曲もまた、そうした詩人の意図をふまえ、美しい日本語のイントネーションを生かしながら、感情の起伏が見事に描かれています。

 何度も繰り返して歌っていると、様々な情景が脳裏をかすめ、知らず知らずのうちに、曲と自分とが一体化していくようです。

 演奏にあたっては、言葉を大切にすることと曲の流れを大切にすることに細心の注意を払いました。団員一人一人の思いをひとつにして精一杯、歌い上げようと思います。会場の皆様に、その熱さが伝われば、と思っております。