〜曲目解説〜
川崎洋の詩による五つの混声合唱曲『やさしい魚』
この作品は、自由でユニークな詩作で知られる川崎洋の5編の詩に新実徳英が作曲し、曲集としてまとめたものです。 4年間の年月を経て1982年の4月に完成し、同年7月24日指揮・関谷晋、ピアノ・田中瑤子、演奏・松原混声合唱団の手によって初演されました。
川崎洋の詩は「天使」のように全てひらがなのみによる詩や、ジョギングの唄」のように擬音をうまく生かしているものなど、
言葉のリズムに乗せられてとても楽しい一面を持っています。また、人のこころの動きを的確にとらえている詩でもあります。
そうした詩のもつリズムや心と、音楽が一体になったのがこの曲集です。
5曲それぞれが独立した曲で、それぞれの特徴がありますが、
その全てが人間の夢や憧れ、生き方といったものを歌っているような気がします。生あるものは花も鳥もそして人間も全てが同じなんだ、
という考え方がその根底にあるようです。
タイトル曲になっている終曲の「やさしい魚」や、「感傷的な唄」「鳥が」は、中学生のための合唱曲としても紹介されており、 多くの中学校の合唱部で練習されたり演奏されたりしているようです。我が今池混声合唱団も、もとをたどれば、 中学校の合唱部からスタートしているので、この曲集を親しみをこめて歌い上げていきたいと思っています。
Light Shine
新約聖書(マタイ5章)の「心の貧しい人たちは幸いである。天国は彼らのものである。」に始まる部分は「八福」と呼ばれます。
今宵おおくりする「Light Shine」は本来子供向けのミュージカルなのです。ミュージカルの中では、1人の男が「幸福」を求めてあちこち旅をし、 「八福」とは何かその手がかりを見つけていくのです。
神は言われた。「光あれ」と。そして光があった。あなたがたがその光である。だからあなたがたがその光を輝かせよ。 (Let your light shine)今回、まだまだ手探りの状態の中、我々が「幸福」というものにどこまで触れられるか、拝聴下さい。
フランスの詩による合唱曲集『月下の一群』
「月下の一群」は、堀口大学が、ボードレール、ヴェルレーヌ、マラルメなどのフランスの近大の詩人66人の長短の作品340編を、 日本語に訳した訳詩集のタイトルです。その日本語は、とても訳詩とは思えないほど洗練され、美しく、我々日本人の心に訴えかけてくるものです。
合唱曲としては、1978年に広島の崇徳高等学校グリークラブの委嘱により、男声合唱のために5編の詩に作曲され、同合唱団によって初演されました。
当時、男声合唱のための組曲や曲集の数は決して多くなく、作曲、出版と同時に、いろいろな男性合唱団で演奏され、現在でも人気の高い曲のひとつとなっています。
旋律の持つ日本的な情感や躍動感、ハーモニーの美しさ、青年らしい感受性が豊かに表された詩と、その心が十分に生かされた曲の深さなど、 作品自体の完成度もきわめて高く、そんな理由から幾度となく混声合唱への編曲を望む声が高まっていました。 そして、1987年に、作曲者・南弘明の同期生である中村順一の手によって、この編曲が実現しました。
本日はこの混声合唱版を演奏いたします。オリジナルの緊張感溢れる男声合唱とは、また一味違った、混声合唱ならではの、 より抒情的で、幅広い響きの「月下の一群」をお楽しみいただければ幸いです。